7月10日、志賀原発を廃炉に!訴訟の第10回口頭弁論が金沢地方裁判所で開かれました。
あの画期的な大飯原発差止め判決以降、初めての口頭弁論です。数多くの原告・サポーターが傍聴に訪れ、裁判員裁判用の広い法廷が一杯にになりました!!
今回原告弁護団は、弁護士登録をして間もない若手弁護士を中心に、4本の準備書面を提出して主張を展開しました。
最初に宮本弁護士が、第22準備書面「原子力発電所施設直下活断層に関する危険性について」要約陳述しました。
S-1断層は志賀原発施設直下にある活断層の一つとして、従来からその危険性が指摘されてきたものです。宮本さんはS-1断層はいずれ必ず動く断層であって、動いたときには原発に対して深刻な影響を及ぼす、とシンプルな議論で指摘しました。種々の批判のある新基準ですら、活断層の真上に原発を建てるべきではないと規定しています。S-1断層が将来活動する可能性のある断層(=活断層)であるという論拠について宮本さんは、パワーポイントを駆使しながら、志賀原発1号機設置許可の際のトレンチ調査で出されたスケッチの中に、非常に明確な活動の跡があることを示しました。一度動いた断層はその部分に力がたまりやすく、周囲の活断層が動いたときに一緒に動いてしまいます。この力学の原理をカレーのレトルトパックを例に、わかりやすく解説しました。
続いて石井弁護士が「新規制基準の適合申請・審査は本訴訟の判断には不要である」と題した第24準備書面を要約陳述しました。
石井さんは福島県の田村市の出身で、昨年12月に登録をしたばかりのホヤホヤの弁護士です。福島原発から30キロ圏内に父母と両親を残していながら、弁護団に加わった葛藤も打ち明けながら、新規制基準の限界を示し、新規制基準に適合しているからといって安全かどうかということは全くわからないと指摘しました。石井さんは裁判所に対して、「被告の時間稼ぎに付き合わないでいただきたい」と強く訴えました。
続いて片岡弁護士が、第25準備書面「テロによる危険性」を要約陳述しました。
福島第一原発事故によって、テロリストたちにハッキリと認識されたことは、中央制御室を占拠するまでもなく、周辺の電気設備に深刻なダメージを与えて電源を断てば、メルトダウンを引き起こせるということでした。また広範囲に放射性物質が拡散し、社会・経済に甚大な被害をもたらしたことも、核を用いたテロ攻撃の「有効性」をさらけ出しました。
日本ではテロというとあまり現実味がないと受け止められがちですが、1970~1999年までに原発を標的としたテロ事件は世界で167件あったということ、また北朝鮮が「労働新聞」で朝鮮半島有事における原発攻撃を示唆するなど、日本における核施設へのテロ攻撃は決して絵空事ではありません。
これに対してわが国の対応は、たとえばテログループの進入を想定した警察と自衛隊の共同訓練は「ノルマのための訓練」の域を出ず、また内部からの情報漏洩や侵入幇助などの対策もきわめて杜撰で、先進国で唯一原発作業員の身元調査を行っていません。
このほか、航空機による進入・衝突や使用済み核燃料プールの脆弱性など、原発に対するテロ攻撃の可能性がかなり高くかつ具体的に存在しているにもかかわらず、核施設において何ら有効な対策がとられていないのが実態です。
片岡さんは、志賀原発におけるテロの危険性を否定することはできず、また実際にテロが行われれば、それにより甚大な被害が生じる具体的な危険性があるから、原発を運転させることは認められない、と主張しました。
最後に中田弁護士が第23準備書面「大飯原発に関する福井地裁判決を受けて」を要約陳述しました。
5月21日に言い渡された大飯判決は、福島原発事故後に初めて示された司法判断です。人格権を憲法上の権利と位置づけ、「これを超える価値を他に見いだすことができない」最も尊重されるべき権利であるとしています。その上で、原子力発電所の運転の利益は「電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属するものであって、憲法上は人格権よりも劣位に置かれるべき」であると明言しました。
そして福島原発事故を見れば原子力発電技術の危険性の本質およびその被害の大きさは明らかであり、「大きな自然災害や戦争以外でこの根源的な権利(人格権)が広範に奪われる事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定しがたい」と喝破しました。そして人格権の根幹部分に関する具体的侵害が認められる場合には、侵害の理由・根拠、侵害者の過失の有無、差止めにより侵害者が被る不利益など、他の要素を考慮することなく差止めが認められるとし、原告の立証責任は、具体的危険性であれば「万が一」の危険性の立証で足りる、としました。
これらの判断は、これまで私たちの弁護団が数多くの準備書面で述べてきた主張とほとんど同じ内容です。中田さんは、これらは大飯原発に特有の事情ではなく、すべての原発および原発差止め訴訟に共通の事情であり、当然志賀原発および本訴訟にも妥当するものだと訴えました。
今回被告北陸電力からは、準備書面9(立証責任に関する内容)が原告への「反論」として出されました。これは福島事故後の司法判断について新たな枠組みを求めたわれわれの主張に対して、民事訴訟において立証責任はいかにあるべきかという、従来からのオーソドックスな議論を対置したものに過ぎません。
弁論終了後、多くの原告が残る中で裁判の進行協議が行われ、岩淵弁護団長は次回までに原告の主張を全部出し切ることを宣言しました。岩淵さんは先週伊方訴訟の原告が結審を求めたことを紹介しながら、被告の側に反論がないのなら、打ち切りを求めることを示唆しました。
これに対して被告北陸電力の代理人は、裁判所からの再三にわたる反論の要請にもかかわらず、「努力しますが、次回までに出せるかどうかわかりません」と何度も繰り返すのみならず、「次々回は3ヶ月後にしてください」などと期日の引き延ばしを求めました。裁判長は「裁判所としては被告に第22および第24準備書面に対する反論を要請しました」と念押しし、被告にイエローカードを突きつけたような格好になりました。
口頭弁論終了後、兼六園下の北陸会館で報告集会が開催され、原告・サポーター、マスコミ関係者など70余人が参加しました。
本日の裁判は大飯原発の原告団の松田事務局長も傍聴し、報告集会で発言していただきました。松田さんは名古屋高裁金沢支部に舞台を移して開かれる控訴審への決意を語るとともに、石川の原告とサポーターに支援を訴えました。
次回口頭弁論は9月29日(月)、次々回は12月15日(月)、いずれも午後1時半から同地裁で開かれる予定です。