志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団ホームページ

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2022年3月17日
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裁判所は釈明権の行使を!

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第9回口頭弁論が3月16日、富山地裁で開かれました。今回も新型コロナ感染防止対策のため、一般の傍聴は16席に制限される中での口頭弁論です。

15時開廷。今回、原告側は第20、第21と2本の準備書面を提出しています。まず「第20準備書面―再度の求釈明の申立て―」について、片口弁護士が要約陳述をおこないました。
原告らはこの間、志賀原発は未曽有の被害を及ぼすリスクがあること、事故がなくても運転自体に膨大な費用がかかること、再エネコストは年々減少傾向にあることなどを明らかにし、被告らが志賀原発を再稼働させることによって会社に取り返しのつかない損害が生じる恐れがあると主張してきました。そして「被告がそれを否定するならばどういう検討をしてきたのかを明らかにせよ」として、第9準備書面を中心に数多くの求釈明を行ってきました。ところが被告らはこの間、志賀再稼働の方針は株主総会で多数の賛成を得ているとし、具体的な検討内容を一切明らかにしていません。今回の「再度」の申立ては被告らの不誠実な対応を明らかにし、「このような姿勢が続くならば文書提出命令の申立ても辞さない」という原告らの強い決意を明らかにしたものです。
続いて「第21準備書面-新規制基準の不合理性-」について鹿島弁護士が要約陳述をおこないました。被告らは志賀原発の再稼働について、「原子力規制委員会の新規制基準適合審査を経て再稼働するので法令等の遵守は明らか」、「回復できない損害が生じる違反行為はない」と主張しています。第21準備書面はこの主張の前提を覆すべく、「そもそも新規制基準が立地審査指針を排除しシビアアクシデント対策にも不備がある」ことなどを指摘し、「それ自体が不合理で安全性を担保するものでない」ということを明らかにしています。

これに対して被告らは準備書面(7)を提出し、原告らの主張が、会社法360条が求める要件事実「法令若しくは定款違反で会社に回復しがたい損害が生じるおそれがある」とは関連がないとし、あらためて求釈明を拒否し、加えて、取締役は原発の安全性の専門家ではなく、原子力規制委員会が世界で最も厳しいとされる新規制基準の適合審査を経て安全を確認し再稼働するという手順を踏むことが、まさに取締役に求められる善管注意義務だと主張しました。

原告らの主張が会社法360条と関連がないとする被告らの主張に対して、原告代理人の水谷弁護士は「原告らの主張を否認するのならば明確な根拠を示せ」、「裁判所は民訴法149条に基づき釈明権を行使してほしい」と迫りました。ここで裁判長は合議すると述べ、休憩となりました。
5分後再開され、ここで鹿島弁護士が挙手、「『世界で最も厳しい基準』とは誰が言っているのか、また金井・石黒両取締役は志賀原発所長を務めていたことはあるか」と被告側に問いました。「世界で最も厳しい基準」は基準を作成した原子力規制委員会委員長は否定していますが、被告は「閣議決定されたエネルギー基本計画の中で記されている」と述べ、また「原発の安全に関する専門知識は法律上、取締役に求められていない」として、金井・石黒両被告の経歴については言及しませんでした。金井・石黒両被告は北陸電力内で長年原子力畑を歩んできた原子力分野の専門家であり、原子力事業の責任者です。志賀原発の安全を規制委員会に丸投げするような言い訳は許されません。
こうした質疑を経た後、裁判所は第21準備書面については、被告に対して考えを示すよう求め、その他の原告が求める求釈明については次回期日(6月15日)までに裁判所の方針を明らかにすると述べ、閉廷となりました。

その後、原告や弁護団、支援者らは弁護士会館に移動して報告集会を開催。和田原告団長、岩淵弁護団長のあいさつに続き、坂本弁護団事務局長が参加者に弁論の内容を解説しました。
また坂本事務局長は、この日の弁論にあたり、原発のコスト問題に詳しい大島堅一龍谷大教授の意見書を提出したことも報告しました。
フクシマから11年、甲状腺がん訴訟の提訴や、福島刑事裁判や東電株主訴訟の動き、ウクライナでの原発への武力攻撃、石川県知事選の結果など情勢についても報告があり、最後に清水原告団事務局長の「奥能登では地震が続いている。なんとしても志賀原発を止めなければならない」という発言で集会を締めくくりました。

2021年12月24日
by ok
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金沢訴訟口頭弁論の報告

12月23日、第35回口頭弁論が金沢地方裁判所205号法廷で行われました。

この時季の金沢には珍しい快晴の空の下、原告・サポーターらは午後2時15分に石川門下に集まり、志賀原発の廃炉を訴える横断幕やアピール板を掲げて裁判所まで行進しました。
傍聴席は全36席。今回も希望者の先着順となり、法廷前の廊下に長い行列ができました。多くの原告・サポーターが駆けつけたため、足りなくなった傍聴席は原告団長らが急遽弁護団席に移って確保しました。

今回原告意見陳述を行ったのは新明 宏さん。
高校、養護学校で理科や農業科の教師をしてきた新明さんは、原子力の活用例としてジャガイモの発芽抑制効果などを教えてきましたが、1986年4月に発生したチェルノブイリ原発事故で、自分が教えてきた認識の甘さを痛感したといいます。
そして2011年3月の福島原発事故によって、未だに故郷に帰ることができない人たちや、心をこめて育ててきた農作物を廃棄しなければならなかった生産者の人たちに思いを寄せ、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を被災した人に最優先に確保すべきだと訴えました。新明さんは最後に、今年に入って珠洲を震源とした地震が60回以上発生していることを指摘し、過ちを再び繰り返さないために、本訴訟を早期に結審することを求めました。

被告北陸電力は事前に提出した「上申書」で、原子力規制委員会の適合性審査の状況や11月18~19日に行なわれた現地調査について報告しました。
これを受けて裁判長は「規制委員会の審査の推移を見守るという審理方針を、従前の通り維持する」と表明し、次回日程を決めただけで、わずか17分で今回の裁判は終わりました。

口頭弁論終了後、北陸会館5階ホールで報告集会が開催され、原告・サポーター、弁護団、マスコミ関係者など約40人が参加しました。

次回口頭弁論は来年4月28日(木)、午後2時から開かれます。

2021年12月14日
by ok
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逃げる北電に裁判所は訴訟指揮を!

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第8回口頭弁論が12月13日、富山地裁で開かれました。
午後3時に開廷。まず和田廣治原告団長の意見陳述です。
冒頭、和田さんは原告8人全員の意見陳述の機会を認めてくれた裁判所に原告団長として感謝の気持ちを伝えました。その後、この株主差止め訴訟に取り組むに至った経緯や、自分の利益ではなく株主の社会的責任として本件訴訟に臨んでいるという自らの基本的姿勢を明らかにしました。80年代、北電は市民有志の素朴な疑問にすら玄関を閉ざして聞こうともせず、志賀1号機の着工を強行したことからはじまり、90年代に入って株主として株主総会で発言しようとしても暴力的な対応で発言を封じ込められてきたこと、その後の株主総会でも回答拒否が続き、回答したかと思えば実に不誠実、不謹慎な答弁を繰り返したことなど、自らの経験、体験をもとにした陳述は、被告・取締役らが株主の圧倒的支持を得ているという株主総会の実態がいかに虚構に満ちたものであるかを白日の下にさらしました。

続いて、原告代理人小島弁護士が第19準備書面の要約陳述をおこない、自治体作成の避難計画が実現可能性という点で多くの問題点を抱えており、このような中での志賀原発の再稼働は住民の安全を確保できず、被告・取締役らの判断は経営者として善管注意義務及び忠実義務に違反することを明らかにしました
原告はこの日、かつて富山県が行ったSPEEDIによる放射性物質の拡散シミュレーションの内容を明らかにした第18準備書面も提出しています。原発事故による放射能拡散で広域かつ甚大な影響が生じます。地域経済が破壊され、しかも現在の避難計画では住民の安全も守れないことを明らかにしました。
原告はこの間、危険な志賀原発を再稼働させるという取締役らの判断を巡って、取締役らが果たすべき善管注意義務及び忠実義務について具体的に列挙し、どのような検討を重ねてきたのか明らかにするよう求めてきました。しかし、これに対して被告取締役と補助参加人である北電は、株主総会で取締役らの方針は圧倒的大多数の株主の支持を得ているという理屈一辺倒で、具体的な議論内容を一切明らかにしていません。この日も前回までに原告が提出した第13準備書面から第17準備書面について同趣旨の意見書を提出し、原告の主張に対してはぐらかしの対応を続けています。
株主総会だけでなく法廷においてもこうした不誠実な対応を続ける被告らに対して、原告代理人の水谷弁護士は「そもそも本件訴訟の根拠となる会社法360条は法令違反ないしそのおそれと、著しい損害が生ずるおそれという2つの要件を満たすなら差止めが認められるとしている。株主総会での大多数の支持があるとか少数の反対だとかは関係がない」と述べ、被告は一体いつまでこんな理由にならない「理由」を繰り返すのか。裁判所は理由にならないとはっきり指摘すべきだ、と声を大にして反論を展開しました。さらに被告・補助代理人が裁判の長期化は被告取締役に応訴の負担を強い、会社と取引先との関係も不安定にしているとの主張に対しても、「志賀原発のために避難訓練をしなければいけない住民の負担を考えろ!」と一刀両断(傍聴席から拍手)。
これに対して被告・補助参加人の代理人は従来の主張を繰り返しましたが、その中で「取締役はまだ志賀原発再稼働の判断を行っていない。規制委員会の判断を受け、再稼働の判断をする」と述べました。この発言には岩淵弁護団長がすぐに反応しました。
「規制委の判断が出たら、再稼働するかどうか判断するなんて初めて聞いた。申請前に判断しているはずなのに、もう一回再稼働の判断するのか」と指摘。被告・補助参加人は「(適合性審査の)申請前は再稼働の判断をしたのではない。再稼働を目指しているのだ」とこれまた珍回答。よほど再稼働を決めたプロセスを明らかにしたくないようです。

以上のような激しいやりとりは、実は裁判所の被告らに対する訴訟指揮を求めたものでもあります。「ボールは裁判所にある。訴訟指揮を!」と水谷弁護士は裁判長に視線を向けました。数秒間の沈黙ののち、裁判長は「被告は第13準備書面から第19準備書面に対する考え方を(意見書ではなく)準備書面で提出してほしい」と述べました。原告のこの間の主張に対して、論点ごとに被告らの考えを述べるよう明確に求めたものではありません。この間、「速やかに請求棄却を」などと訴訟進行に対する意見書を提出するなかで、結果的に原告の主張に対して反論を展開してきた被告らです。同様の内容を「準備書面」として提出してくる可能性も残されており、いわゆる玉虫色の訴訟指揮と言わざるをえません。
被告らが次回までにどんな準備書面を提出するのか、それに対して裁判所がどう対応するのか、次回第9回口頭弁論は今後の訴訟の行方を左右する重要な節目となる可能性があります。おおいに注目です。

原告らは閉廷後、富山県弁護士会館に会場を移して報告集会を行ない、和田原告団長、岩淵弁護団長のあいさつに続き、弁護団事務局長の坂本弁護士から法廷での熱いやりとりの解説を受け、今後の見通しや弁護団の対応方針などについて説明を受けました。参加者からの質問や意見交換、さらに金沢訴訟、福島原発事故刑事裁判、東電株主代表訴訟の報告も受け、報告集会は閉会しました。

今後の予定
第9回口頭弁論  3月16日(水)15:00~
第10回口頭弁論 6月15日(水)15:00~