志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団ホームページ

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2022年6月16日
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裁判長が求釈明に対する「見解」を示す

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第10回口頭弁論が6月15日、富山地裁で行なわれました。今回は久しぶりに傍聴制限が解除され、私たち原告・サポーターは抽選を経ず先着順に入場しました。それでも弁護団を含めて全35席が一杯となる中、午後3時に開廷されました。

今回は裁判官の交代による弁論の更新で、まず原告団副団長の川原登喜のさん(入善町)が2回目の意見陳述を行ないました。
川原さんは今年1月福島県の小児甲状腺がん患者6人が東京電力に損害賠償を求めて提訴した訴訟を取り上げ、福島県では266人が甲状腺がんと診断され、うち222人が摘出などの手術を受けている事実を指摘して「『過剰診断』などと福島原発事故の影響を否定することは許されない」と訴えました。さらに避難計画の不備や軍事攻撃に対するリスクなども指摘し、「『志賀原発に経済合理性は全くない』(大島龍谷大教授意見書)のに、私たちや子どもたちの命を脅かして作られる電気はいりません」と述べて陳述を締めくくりました。

続いて原告弁護団の坂本弁護士が今回提出した第22準備書面について、パワーポイントを使って要約陳述をおこないました。この書面は、富山訴訟の訴えの根拠となる会社法360条に定める取締役の善管注意義務について、その内容、特定の程度、証拠提出に関する被告らの協力義務に関する理論面を補強し、裁判所に対して被告への釈明を促すための書面です。
坂本さんは「取締役が経営上の意思決定をするにあたり、『前提となる事実の認識』に不注意があるなら、(会社法360条にある)善管注意義務の違反が認められる」と指摘し、この「不注意」の存在は「事実に基づく意思決定」の当否いかんとは別個に、これに先立って独自に判断できる事項であることを明らかにしました。そして要は「合理的な情報収集・調査・検討が行なわれたか否か」であるとし、「前提となる事実の認識」について被告らに不注意がなかったかどうかを判断するためにこそ、取締会の議事録を法廷に提出することが必要だとあらためて主張しました。

一方、被告ら及び補助参加人(北陸電力)の弁護団からは準備書面(8)が提出されており、前回口頭弁論で原告が提出した第21準備書面―新規制基準の不合理性―」に対する反論が展開されています。加えて、第22準備書面に対しても「新規制基準の内容やその妥当性などについては取締役に検討義務はない」などと反論を展開しました。

以上を踏まえて裁判長は、最大の争点となっている原告の被告に対する求釈明について、裁判所としての見解を明らかにしました。
被告に対しては、原告が第9準備書面で求めた「使用済み核燃料プールの危険性」に関してのみ釈明を求めましたが、この他の求釈明については認めず、争点を厳しく絞り原告に重い立証責任を負わせる独自の見解を表明しました。会社法360条の「善管注意義務違反によって会社に回復できない損害が生じるおそれ」とは「会社が全資産をもってしても補塡できない程度の損害」だとしました。これでは志賀原発が重大事故を起した場合に限られてしまいます。裁判所が勝手に判断のモノサシを狭めてしまっていると言わざるを得ません。
その直後、原告弁護団は15分間の休廷を求めて対応を協議しました。そして、準備書面(8)に対する反論と、裁判所の判断枠組みそのものが間違っているということを次回期日で主張していく旨を伝えました。

その後原告や弁護団・支援者らは弁護士会館に移動し、報告集会を開催しました。

2022年4月29日
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金沢訴訟口頭弁論の報告

4月28日、第36回口頭弁論が金沢地方裁判所205号法廷で行われました。

快晴の空の下、原告・サポーターらは午後1時に石川門下白鳥路入口に集まり、司法の責任を果すよう求める横断幕を掲げて裁判所まで行進しました。
今回も傍聴席は全36席。希望者の先着順となり、法廷前の廊下に行列ができました。

今回原告意見陳述を行ったのは全国一般石川地方本部の種井一平さん。
種井さんは今年3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震による福島第一原発の使用済み核燃料プールの冷却停止、そしてロシアのウクライナ侵攻の中で起こった原発への武力攻撃などタイムリーな話題から原発の本質的な危険性を指摘しました。そして「福島原発事故までに一体いくつの事故があったのか、どれほどの隠蔽や事実の歪曲や改ざんが行なわれ、どれだけの地域社会が分断と対立に追いやられ、どれだけの原発労働者が被曝(ひばく)に苦しんできたのか」と述べ、福島第一原発事故を本当に最後にしなければいけないと訴えました。

被告北陸電力は4月21日に提出した「上申書」で、1月14日に行なわれた原子力規制委員会の審査会合の状況や審査会合に向けたヒアリング(2/7、3/14、4/13)について報告しました。次回審査会合の日程は未定だということです。
これを受けて裁判長は規制委員会の判断を待つという審理方針は変更しない旨表明して次回日程を決め、今回もわずか18分で終わりました。

口頭弁論終了後、北陸会館5階ホールで報告集会が開催され、原告・サポーター、弁護団、マスコミ関係者など約40人が参加しました。
集会の中で北野原告団長は、ロシアの化石燃料からの脱却の動きと絡めて原発の再稼働を目論み、審査の迅速化を狙う政府の方針に警鐘を鳴らしました。また原子力防災・避難計画や安全協定の問題にしっかり声を上げ、近隣住民と一緒に再稼働の動きを阻止していかなければならないと訴えました。
富山訴訟の和田原告団長からは富山地裁での「熱い攻防」が紹介され、裁判所が次回口頭弁論(6月15日)で「今後の審理の方針について裁判所の見解を示す」と述べており、その対応に注目すべきだと強調しました。
また「北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会」の中垣代表からは、6月28日の北電株主総会に向けた準備状況の報告があり、北電の株価が落ち込んでいるこの時期、原告やサポーターに対して新たな株主になってくれるよう求めました。

次回の口頭弁論は7月15日(金)、午後3時から開かれます。

2022年3月17日
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裁判所は釈明権の行使を!

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第9回口頭弁論が3月16日、富山地裁で開かれました。今回も新型コロナ感染防止対策のため、一般の傍聴は16席に制限される中での口頭弁論です。

15時開廷。今回、原告側は第20、第21と2本の準備書面を提出しています。まず「第20準備書面―再度の求釈明の申立て―」について、片口弁護士が要約陳述をおこないました。
原告らはこの間、志賀原発は未曽有の被害を及ぼすリスクがあること、事故がなくても運転自体に膨大な費用がかかること、再エネコストは年々減少傾向にあることなどを明らかにし、被告らが志賀原発を再稼働させることによって会社に取り返しのつかない損害が生じる恐れがあると主張してきました。そして「被告がそれを否定するならばどういう検討をしてきたのかを明らかにせよ」として、第9準備書面を中心に数多くの求釈明を行ってきました。ところが被告らはこの間、志賀再稼働の方針は株主総会で多数の賛成を得ているとし、具体的な検討内容を一切明らかにしていません。今回の「再度」の申立ては被告らの不誠実な対応を明らかにし、「このような姿勢が続くならば文書提出命令の申立ても辞さない」という原告らの強い決意を明らかにしたものです。
続いて「第21準備書面-新規制基準の不合理性-」について鹿島弁護士が要約陳述をおこないました。被告らは志賀原発の再稼働について、「原子力規制委員会の新規制基準適合審査を経て再稼働するので法令等の遵守は明らか」、「回復できない損害が生じる違反行為はない」と主張しています。第21準備書面はこの主張の前提を覆すべく、「そもそも新規制基準が立地審査指針を排除しシビアアクシデント対策にも不備がある」ことなどを指摘し、「それ自体が不合理で安全性を担保するものでない」ということを明らかにしています。

これに対して被告らは準備書面(7)を提出し、原告らの主張が、会社法360条が求める要件事実「法令若しくは定款違反で会社に回復しがたい損害が生じるおそれがある」とは関連がないとし、あらためて求釈明を拒否し、加えて、取締役は原発の安全性の専門家ではなく、原子力規制委員会が世界で最も厳しいとされる新規制基準の適合審査を経て安全を確認し再稼働するという手順を踏むことが、まさに取締役に求められる善管注意義務だと主張しました。

原告らの主張が会社法360条と関連がないとする被告らの主張に対して、原告代理人の水谷弁護士は「原告らの主張を否認するのならば明確な根拠を示せ」、「裁判所は民訴法149条に基づき釈明権を行使してほしい」と迫りました。ここで裁判長は合議すると述べ、休憩となりました。
5分後再開され、ここで鹿島弁護士が挙手、「『世界で最も厳しい基準』とは誰が言っているのか、また金井・石黒両取締役は志賀原発所長を務めていたことはあるか」と被告側に問いました。「世界で最も厳しい基準」は基準を作成した原子力規制委員会委員長は否定していますが、被告は「閣議決定されたエネルギー基本計画の中で記されている」と述べ、また「原発の安全に関する専門知識は法律上、取締役に求められていない」として、金井・石黒両被告の経歴については言及しませんでした。金井・石黒両被告は北陸電力内で長年原子力畑を歩んできた原子力分野の専門家であり、原子力事業の責任者です。志賀原発の安全を規制委員会に丸投げするような言い訳は許されません。
こうした質疑を経た後、裁判所は第21準備書面については、被告に対して考えを示すよう求め、その他の原告が求める求釈明については次回期日(6月15日)までに裁判所の方針を明らかにすると述べ、閉廷となりました。

その後、原告や弁護団、支援者らは弁護士会館に移動して報告集会を開催。和田原告団長、岩淵弁護団長のあいさつに続き、坂本弁護団事務局長が参加者に弁論の内容を解説しました。
また坂本事務局長は、この日の弁論にあたり、原発のコスト問題に詳しい大島堅一龍谷大教授の意見書を提出したことも報告しました。
フクシマから11年、甲状腺がん訴訟の提訴や、福島刑事裁判や東電株主訴訟の動き、ウクライナでの原発への武力攻撃、石川県知事選の結果など情勢についても報告があり、最後に清水原告団事務局長の「奥能登では地震が続いている。なんとしても志賀原発を止めなければならない」という発言で集会を締めくくりました。