志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団ホームページ

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2021年12月14日
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逃げる北電に裁判所は訴訟指揮を!

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第8回口頭弁論が12月13日、富山地裁で開かれました。
午後3時に開廷。まず和田廣治原告団長の意見陳述です。
冒頭、和田さんは原告8人全員の意見陳述の機会を認めてくれた裁判所に原告団長として感謝の気持ちを伝えました。その後、この株主差止め訴訟に取り組むに至った経緯や、自分の利益ではなく株主の社会的責任として本件訴訟に臨んでいるという自らの基本的姿勢を明らかにしました。80年代、北電は市民有志の素朴な疑問にすら玄関を閉ざして聞こうともせず、志賀1号機の着工を強行したことからはじまり、90年代に入って株主として株主総会で発言しようとしても暴力的な対応で発言を封じ込められてきたこと、その後の株主総会でも回答拒否が続き、回答したかと思えば実に不誠実、不謹慎な答弁を繰り返したことなど、自らの経験、体験をもとにした陳述は、被告・取締役らが株主の圧倒的支持を得ているという株主総会の実態がいかに虚構に満ちたものであるかを白日の下にさらしました。

続いて、原告代理人小島弁護士が第19準備書面の要約陳述をおこない、自治体作成の避難計画が実現可能性という点で多くの問題点を抱えており、このような中での志賀原発の再稼働は住民の安全を確保できず、被告・取締役らの判断は経営者として善管注意義務及び忠実義務に違反することを明らかにしました
原告はこの日、かつて富山県が行ったSPEEDIによる放射性物質の拡散シミュレーションの内容を明らかにした第18準備書面も提出しています。原発事故による放射能拡散で広域かつ甚大な影響が生じます。地域経済が破壊され、しかも現在の避難計画では住民の安全も守れないことを明らかにしました。
原告はこの間、危険な志賀原発を再稼働させるという取締役らの判断を巡って、取締役らが果たすべき善管注意義務及び忠実義務について具体的に列挙し、どのような検討を重ねてきたのか明らかにするよう求めてきました。しかし、これに対して被告取締役と補助参加人である北電は、株主総会で取締役らの方針は圧倒的大多数の株主の支持を得ているという理屈一辺倒で、具体的な議論内容を一切明らかにしていません。この日も前回までに原告が提出した第13準備書面から第17準備書面について同趣旨の意見書を提出し、原告の主張に対してはぐらかしの対応を続けています。
株主総会だけでなく法廷においてもこうした不誠実な対応を続ける被告らに対して、原告代理人の水谷弁護士は「そもそも本件訴訟の根拠となる会社法360条は法令違反ないしそのおそれと、著しい損害が生ずるおそれという2つの要件を満たすなら差止めが認められるとしている。株主総会での大多数の支持があるとか少数の反対だとかは関係がない」と述べ、被告は一体いつまでこんな理由にならない「理由」を繰り返すのか。裁判所は理由にならないとはっきり指摘すべきだ、と声を大にして反論を展開しました。さらに被告・補助代理人が裁判の長期化は被告取締役に応訴の負担を強い、会社と取引先との関係も不安定にしているとの主張に対しても、「志賀原発のために避難訓練をしなければいけない住民の負担を考えろ!」と一刀両断(傍聴席から拍手)。
これに対して被告・補助参加人の代理人は従来の主張を繰り返しましたが、その中で「取締役はまだ志賀原発再稼働の判断を行っていない。規制委員会の判断を受け、再稼働の判断をする」と述べました。この発言には岩淵弁護団長がすぐに反応しました。
「規制委の判断が出たら、再稼働するかどうか判断するなんて初めて聞いた。申請前に判断しているはずなのに、もう一回再稼働の判断するのか」と指摘。被告・補助参加人は「(適合性審査の)申請前は再稼働の判断をしたのではない。再稼働を目指しているのだ」とこれまた珍回答。よほど再稼働を決めたプロセスを明らかにしたくないようです。

以上のような激しいやりとりは、実は裁判所の被告らに対する訴訟指揮を求めたものでもあります。「ボールは裁判所にある。訴訟指揮を!」と水谷弁護士は裁判長に視線を向けました。数秒間の沈黙ののち、裁判長は「被告は第13準備書面から第19準備書面に対する考え方を(意見書ではなく)準備書面で提出してほしい」と述べました。原告のこの間の主張に対して、論点ごとに被告らの考えを述べるよう明確に求めたものではありません。この間、「速やかに請求棄却を」などと訴訟進行に対する意見書を提出するなかで、結果的に原告の主張に対して反論を展開してきた被告らです。同様の内容を「準備書面」として提出してくる可能性も残されており、いわゆる玉虫色の訴訟指揮と言わざるをえません。
被告らが次回までにどんな準備書面を提出するのか、それに対して裁判所がどう対応するのか、次回第9回口頭弁論は今後の訴訟の行方を左右する重要な節目となる可能性があります。おおいに注目です。

原告らは閉廷後、富山県弁護士会館に会場を移して報告集会を行ない、和田原告団長、岩淵弁護団長のあいさつに続き、弁護団事務局長の坂本弁護士から法廷での熱いやりとりの解説を受け、今後の見通しや弁護団の対応方針などについて説明を受けました。参加者からの質問や意見交換、さらに金沢訴訟、福島原発事故刑事裁判、東電株主代表訴訟の報告も受け、報告集会は閉会しました。

今後の予定
第9回口頭弁論  3月16日(水)15:00~
第10回口頭弁論 6月15日(水)15:00~

2021年9月30日
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「株主への説明責任果たさぬ経営陣」が鮮明に

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第7回口頭弁論が9月29日、富山地裁で行なわれました。今回も新型コロナ感染防止のため、傍聴席は一席ずつ間隔を空けての17席(マスコミ席を除く)に制限されました。


裁判は午後3時に開廷され、まずは和田美智子さんの原告意見陳述です。NPOの一員として富山市郊外で農作業に取り組み、夏には福島の子どもたちの保養を受け入れている和田さんは、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「原発いらない」と声を上げて行動を始めたこと、能登原発防災研究会で原発の学習を重ねてきたことなど自身の活動を語り、さらに福島原発事故への反省がなく、株主への説明責任も果たさない北電取締役の姿勢を厳しく批判しました。最後に、豊かな自然の恵みを奪い、人権を侵害していくのが原発だと指摘し、一日も早く志賀原発の運転差止めにつながる判決を出すよう求めました。

続いて原告弁護団長の岩淵弁護士が、今回提出した第13準備書面「関電・中電との契約の終了」について、要約陳述をおこないました。志賀2号機は、建設前の1996年に関西電力・中部電力と交わされた契約によって、最大出力135.8万Kwの約半分(60万Kw)を関電・中電に供給し、受電料金に加えて保守管理のコストの一部を負担してもらう「共同開発」の形態となっていました。この契約が今年3月で終了していたにもかかわらず、そしてそのことを今年の株主総会で株主から質問されたにもかかわらず、北電経営陣は一切答えることはありませんでした。それが明らかにされたのは関電の株主総会でした。
中電・関電の年間支払額は270億円程度と推定され、北電の経営(2020年経常利益は123億円)に重大な影響を及ぼすことは容易に想像できます。北電取締役らは株主総会で決められた事項を遂行することが取締役の義務と述べていますが、株主の利益にかかわる重大な事項についてなんら説明せず議決していることが明らかとなりました。また今回の件は、当初から過剰設備と指摘されていた2号機がやはり不要だということをあらためて明らかにするものです。岩淵弁護士は、株主への説明責任を果たさず、株主総会を形骸化させている被告取締役らを厳しく批判し、関電・中電との契約の実態や、株主総会で説明しなかった理由など5項目について釈明を求めました。
これについて裁判長は、次回口頭弁論で釈明の要否も含め回答するよう被告に求めました。

原稿弁護団はこのほか、前回裁判長から求められた志賀原発の重大事故の機序(メカニズム)について、第14準備書面「重大事故発生の機序・総論」、第15準備書面「基準地震動を超える地震に襲われる危険性」、第16準備書面「敷地内断層の危険性」、第17準備書面「避難計画について審理する必要性」の各書面を提出しました。
一方、被告と補助参加人の北電からは準備書面(6)が提出され、原告が第12準備で求めた求釈明について「いずれも回答の必要性が認められない」と回答拒否の方針を明確にしました。「株主総会の議決を踏まえて業務を執行しており、なんら善管注意義務違反にはあたらない」と従来の主張を繰り返しました。

最後に次々回の期日を決め、約40分間で今回の口頭弁論は終わりました。

その後、会場を富山県弁護士会館に移し、報告集会を行ないました。
和田廣治原告団長は「原告の求釈明に応えない、株主総会でも株主に対して説明責任を果たさない北電経営陣の姿勢が鮮明になった」と厳しく批判し、参加者へ今後の裁判への一層の支援を訴えました。
意見陳述をおこなった和田美智子さんからは、日々の農作業にいそしむ暮らしの中からの思いを述べたこと、これまでのさまざまな記憶が甦(よみがえ)ってきたことなどが語られました。
岩淵弁護団長、坂本弁護団事務局長からは今回の口頭弁論の内容、とくに新たに提出した準備書面の内容について詳しく、わかりやすく解説されました。そして、次回口頭弁論では裁判所から何らかの方針が示されるだろうとの見通しが示されました。

今後の予定
第8回口頭弁論 ’21年12月13日(月)15:00~
第9回口頭弁論 '22年3月16日(水)15:00~

2021年9月14日
by ok
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金沢訴訟口頭弁論の報告

9月13日(月)、第34回口頭弁論が金沢地方裁判所205号法廷で行われました。

秋晴れの空の下、原告・サポーターらは午後1時に石川門下に集まり、早期結審を訴える横断幕やアピール板を掲げて裁判所まで行進しました。
コロナ感染対策のために減らされた傍聴席は全37席。今回も先着順となり、法廷前の廊下に長い行列ができました。

今回原告意見陳述を行ったのは冬爪よしえさん。
冬爪さんは3.11福島原発事故の衝撃的な映像を見て「何の迷いもなく」原告団に加わりました。しかし、10年経った今、この裁判が未だ続いているなんてあり得ない、自分がここで話をしているのが不思議でならない、と率直な思いを語りました。
25年間教師をしてきた冬爪さんは、陳述の中である新聞の投稿を取り上げました。
投稿者は50年前小学校で福島第一原発を見学したとき、担任の先生から「原発は絶対安全」と聞かされました。福島原発事故後、その先生は「何という間違いを教えたのか」と後悔し、そのときの生徒である60代の投稿者を探し出して謝った、という話です。
冬爪さんは保健体育の授業で「先生、地震で原発事故が起きたら、どしたらいいが」という生徒にちゃんと答えられなかった経験を語り、「私自身、たくさんの過ちを犯してきたかも知れない」と教師としての過去を振り返りました。
冬爪さんは最後に、「50年先、100年先を生きる子どもたちに負の遺産を残しては絶対にいけない」と述べ、志賀原発の即時廃炉と一刻も早い結審を訴えました。

次に北陸電力が9月6日提出の「上申書」に基づいて、適合性審査の状況について報告しました。
それによると、8月2日および9月8日に審査会合に向けたヒアリングがあり、今後敷地近傍の(半径5km以内で、いずれも最近北電が活断層だと認めた)福浦断層・碁盤縞沖断層・兜岩沖断層について審査が行なわれる予定だということです。
原告側弁護団は、敷地近傍の断層の審査も始まっておらず、その他の断層、とくに敷地内断層の審査についてはその予定すら立っていない。これ以上審理を引き延ばすべきではないとして、従来どおり早期結審を求めました。

これに対して裁判長は、昨年7月に示した審理方針を変更する必要性は今のところ認められないとして、次回日程を決定、この日の裁判はわずか21分で終わりました。

口頭弁論終了後、北陸会館5階ホールで報告集会が開催され、原告・サポーター、弁護団、マスコミ関係者など40余人が参加しました。

次回口頭弁論は12月23日(木)、午後3時15分から開かれます。