志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団ホームページ

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2022年10月6日
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「裁判所の見解」を原告が批判

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第11回口頭弁論が10月5日、富山地裁で行なわれました。裁判所近くに集まった原告・弁護団は、横断幕や原告団旗を掲げて裁判所まで行進しました。今回も傍聴抽選はなく、原告・サポーターは先着順に入場し、裁判は午後3時に開廷されました。

今回原告弁護団は3本の準備書面を提出しました。
最初に坂本弁護士が第23準備書面「裁判所の見解について」をパワーポイントを使って要約陳述しました。
裁判所は前回(6月15日)の口頭弁論において、株主による差止請求権を行使するための要件である「回復することができない損害を生じるおそれ」がある場合(会社法360条3項)とは、「広範囲に放射性物質を飛散させる」ような会社の全資産(北陸電力の場合約1.5兆円)をもっても償えないような重大事故が発生した場合に限られる、と表明しました。
これに対して坂本弁護士は、裁判所の見解は賠償主体を会社(補助参加人)とする点においても、損害の規模・程度の点においても、差止請求権の内容をあまりにも狭めるものであって、従来の学説や裁判例と相容れない(=誤っている)と率直に指摘しました。仮に重大事故が起きなくても、志賀原発を再稼働する準備をするだけでも数十億円もの被害が発生するおそれがある。こうした経済面での被害も善管注意義務の対象になるはずだ、と主張したのです。
また第24準備書面「新規制基準の限界」では、新規制基準は「世界最高レベルの基準」でもないし、田中元規制委員長が何度も表明したように「それをクリアーしたから安全だというものでもない」から、新規制基準に則って再稼働したとしても重大事故が起きる可能性がある、という主張をしています。
また第25準備書面「志賀原発の経済性について」では、大島堅一龍谷大教授の意見書に基づいて、2023年度に再稼働するという(現実的にはあり得ない)北電に有利な想定に立ったとしても、発電コストは志賀2号機で11.8円/kWhとなり、どの電源よりも高くなるということを明らかにしました。

一方被告側は求釈明の回答をしたと称する準備書面(9)を提出しました。
法廷では「裁判所の見解に異論はない」と述べ、原告に対しては被告の準備書面などで反論済みであり、主張は出尽くしている。早期に裁判を終結すべきだとして、結審するよう求めました。

これに対して裁判所は自らの「見解」について正しいとも間違っているとも表明せず、「この点は今後の進行を踏まえた上で、必要に応じて検討する」とし、原告には被告の準備書面(9)に対する反論を、被告には原告第24準備書面に対する反論を、それぞれ次回弁論までに提出するよう求めて閉廷しました。

裁判終了後、原告や弁護団・支援者らは弁護士会館に移動し、報告集会を開催しました。

次回の裁判は2023年1月11日(水)、次々回は3月20日(月)いずれも午後3時から開かれます。

2022年7月16日
by ok
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金沢訴訟口頭弁論の報告

7月15日、第37回口頭弁論が金沢地方裁判所205号法廷で行われました。

午前中の雨も上がって強い陽射しが照りつける中、原告・サポーターらは午後2時に石川門下白鳥路入口に集まり、横断幕やアピール板を掲げて裁判所まで行進しました。
今回はコロナ禍による傍聴制限が解除されて全73席が先着順となり、県外も含め多くの原告・サポーター、支援者らが傍聴しました。

今回原告意見陳述を行ったのは森 一敏(前金沢市議)さん。
森さんは2006年、金沢地裁で志賀2号機の差止め判決に傍聴人として立ち会っています。そのときの光景を鮮明に思い出しながら、「その後逆転されはしたものの、あの判決が切り拓いた地平はドイツ倫理委員会に連なり、福井地裁判決へと流れ込み、今日、水戸地裁判決、札幌地裁判決へと脈々と受け継がれている」と指摘しました。
そして最後に裁判長としっかり目を合せ、「本裁判は2012年の提訴以来すでに10年、あまりにも長すぎます。能登を震源とする強い地震が頻発する中、今こそ司法の独立性にかけて、一日も早い結審と廃炉を命じる判決を出してください」と強く訴えました。

被告北陸電力は7月8日に提出した「上申書」で、5月20日に行なわれた原子力規制委員会の審査会合の状況などについて述べました。敷地内断層がいずれも後期更新世以降活動していない(活断層ではない)とする北電の説明に対して、規制委が敷地内および近傍の断層について再度現地調査を実施する方針を示したことが報告されました。

これを受けて裁判長は「規制委員会の判断を待つ」という審理方針は変更しない旨あらためて表明しました。
ここで原告の岩淵弁護団長は発言を求め、6月30日泊原発の差止めを命じた札幌地裁判決に触れて「あの判決は規制委の判断が出る前に差止めた。規制委の審査に拘わらず、人格権の侵害があるかどうかは裁判所が独自に判断すればいい、ということを示した」と指摘しました。しかし裁判長は次回日程を決め、この日の弁論は約20分で終わりました。

口頭弁論終了後、北陸会館5階ホールで報告集会が開催され、原告・サポーター、弁護団、マスコミ関係者など約40人が参加しました。
集会の中で北野原告団長は、電力不足を利用しながら「原発9機を再稼働させる」とする岸田総理を批判しつつ、防災計画や安全協定について志賀町や七尾市と自治体交渉を進めていることを明らかにし、その問題を抜きにして再稼働はあり得ないことを訴えました。
また岩淵弁護団長は最近の三つの判決の共通点を指摘しながら、「規制委の審査基準を無視したところに大きな特徴がある」ことを明らかにし、「是非とも私たちの裁判に活かしていきたい」と述べました。
また東京電力株主代表訴訟の原告でもある浅田正文(原告副団長)さんは、当日の法廷のリアルな描写を交えながら、東京地裁判決の意義を強調しました。

次回の口頭弁論は10月24日(月)、午後2時から開かれます。

2022年6月16日
by ok
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裁判長が求釈明に対する「見解」を示す

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第10回口頭弁論が6月15日、富山地裁で行なわれました。今回は久しぶりに傍聴制限が解除され、私たち原告・サポーターは抽選を経ず先着順に入場しました。それでも弁護団を含めて全35席が一杯となる中、午後3時に開廷されました。

今回は裁判官の交代による弁論の更新で、まず原告団副団長の川原登喜のさん(入善町)が2回目の意見陳述を行ないました。
川原さんは今年1月福島県の小児甲状腺がん患者6人が東京電力に損害賠償を求めて提訴した訴訟を取り上げ、福島県では266人が甲状腺がんと診断され、うち222人が摘出などの手術を受けている事実を指摘して「『過剰診断』などと福島原発事故の影響を否定することは許されない」と訴えました。さらに避難計画の不備や軍事攻撃に対するリスクなども指摘し、「『志賀原発に経済合理性は全くない』(大島龍谷大教授意見書)のに、私たちや子どもたちの命を脅かして作られる電気はいりません」と述べて陳述を締めくくりました。

続いて原告弁護団の坂本弁護士が今回提出した第22準備書面について、パワーポイントを使って要約陳述をおこないました。この書面は、富山訴訟の訴えの根拠となる会社法360条に定める取締役の善管注意義務について、その内容、特定の程度、証拠提出に関する被告らの協力義務に関する理論面を補強し、裁判所に対して被告への釈明を促すための書面です。
坂本さんは「取締役が経営上の意思決定をするにあたり、『前提となる事実の認識』に不注意があるなら、(会社法360条にある)善管注意義務の違反が認められる」と指摘し、この「不注意」の存在は「事実に基づく意思決定」の当否いかんとは別個に、これに先立って独自に判断できる事項であることを明らかにしました。そして要は「合理的な情報収集・調査・検討が行なわれたか否か」であるとし、「前提となる事実の認識」について被告らに不注意がなかったかどうかを判断するためにこそ、取締会の議事録を法廷に提出することが必要だとあらためて主張しました。

一方、被告ら及び補助参加人(北陸電力)の弁護団からは準備書面(8)が提出されており、前回口頭弁論で原告が提出した第21準備書面―新規制基準の不合理性―」に対する反論が展開されています。加えて、第22準備書面に対しても「新規制基準の内容やその妥当性などについては取締役に検討義務はない」などと反論を展開しました。

以上を踏まえて裁判長は、最大の争点となっている原告の被告に対する求釈明について、裁判所としての見解を明らかにしました。
被告に対しては、原告が第9準備書面で求めた「使用済み核燃料プールの危険性」に関してのみ釈明を求めましたが、この他の求釈明については認めず、争点を厳しく絞り原告に重い立証責任を負わせる独自の見解を表明しました。会社法360条の「善管注意義務違反によって会社に回復できない損害が生じるおそれ」とは「会社が全資産をもってしても補塡できない程度の損害」だとしました。これでは志賀原発が重大事故を起した場合に限られてしまいます。裁判所が勝手に判断のモノサシを狭めてしまっていると言わざるを得ません。
その直後、原告弁護団は15分間の休廷を求めて対応を協議しました。そして、準備書面(8)に対する反論と、裁判所の判断枠組みそのものが間違っているということを次回期日で主張していく旨を伝えました。

その後原告や弁護団・支援者らは弁護士会館に移動し、報告集会を開催しました。