1月29日午後5時、関西電力高浜原発3号機(福井県高浜町)が再稼働されました。
3.11福島原発事故後では、九州電力川内原発1、2号機に続いて3基目、MOX燃料を使うプルサーマル発電では、初めての再稼働です。
若狭湾は13基の商業炉が集中する「原発銀座」。ここで過酷事故が発生すれば、日本海の強風にあおられて、福島以上に遠く、広く拡散する可能性があります。高浜原発の約50km先には1400万人の水源である琵琶湖があります。
避難計画の策定が義務づけられた30km圏に暮らす住民は福井、京都、兵庫の約18万人。過酷事故の際の広域避難先は、4府県56自治体が想定されていますが、そのほとんどで受入れの具体的な計画が未策定で、訓練も実施されていません。
こんな無責任な体制のまま、立地自治体だけの同意を免罪符のように原発が再稼働されていきます。フクシマの尊い教訓はどこへ行ってしまったのか?
「さよなら!志賀原発ネットワーク」の抗議声明を以下に転載します。
抗 議 声 明 (2016年1月29日)
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
経済産業大臣 林 幹雄 様
原子力規制委員会委員長 田中 俊一 様
関西電力株式会社 社長 八木 誠 様
さよなら!志賀原発ネットワーク
共同代表 岩淵 正明
南 高広
中垣 たか子
関西電力高浜原発3号機の原子炉起動を強行したことに、私たちは強く抗議します。
2011年3月の福島第一原発事故からほぼ5年が経過しても事故の収束は全く見通せず、事故の原因究明や責任の追及はうやむやのままで、被災者の救済も進んでいません。その一方、各種の世論調査では相変わらず原発再稼働への反対が過半数を占めています。昨年8月に九州電力川内原発1号機が再稼働するまで約2年間、原発ゼロでも電力需給に何ら問題はありませんでした。その後も原発ほぼゼロ状態が継続していますが、今年の冬の需給も供給余力があり、原発に頼らずとも夏と冬のピーク需要時の供給予備力は確保できることが実証されています。 にもかかわらず「今なぜ、安全性をないがしろにして再稼働を強行しなければならないのか」という多くの人々の疑問に、国も電力会社もまったく答えようとしていません。高浜原発には免震重要棟が設置されておらず、事故時に格納容器の破損を防ぐフィルター付きベントの設置も猶予されています。また、安全上重要な機器である蒸気発生器の耐震性に重大な疑義があることが判明し、行政不服審査法に基づく異議申立が行われているところです。耐震性の問題だけでなく、一般のウラン燃料より危険なMOX燃料を使うプルサーマル発電が行われることも、危険性を増す要因となっています。大事故の際の汚染水対策もありません。潮の流れは、季節を問わず若狭から能登に向かっているので、隣県の石川は甚大な被害を蒙ることになりかねません。その他、ケーブル敷設の安全性の問題もあります。昨年末、複数の原発で、安全上重要なケーブルと一般のケーブルが混在して敷設されているという新規制基準違反が発覚し、原子力規制委員会が全国の原発に調査を命じた際、再稼働を準備中の高浜3,4号機とすでに運転中の川内原発は調査対象から除外され、違反の有無さえほとんど確認されていないのです。原子力規制委員会は、原発の再稼働を優先し、規制機関としての本来の任務を放棄していると言わざるをえません。さらに、事故の際の避難計画は文字通り「絵に描いた餅」で、実効性を検証するための広域の住民避難訓練などは行われておらず、広域避難先に指定されている4府県56市町で曲がりなりにも受入れ計画を策定しているのは7市にとどまっているのが実態で、30km圏内にある福井県外の10自治体で再稼働を容認しているのは1市だけです。近畿の水がめである琵琶湖が放射能で汚染されるも可能性も危惧されています。
福島原発の事故から何も学ばず、その教訓を少しも活かさないまま、しかも誰も安全対策の最終責任を負わない集団無責任体制で、危険な原発の再稼動が強行されようとしているのです。
このような状況では、福島事故よりもさらに深刻な過酷事故を起こす危険性が懸念されます。
私たちは、高浜原発の再稼働にむけた全作業の停止を求めます。
左は北陸中日新聞(1/30)
右は朝日新聞(同)
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