志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第7回口頭弁論が9月29日、富山地裁で行なわれました。今回も新型コロナ感染防止のため、傍聴席は一席ずつ間隔を空けての17席(マスコミ席を除く)に制限されました。
裁判は午後3時に開廷され、まずは和田美智子さんの原告意見陳述です。NPOの一員として富山市郊外で農作業に取り組み、夏には福島の子どもたちの保養を受け入れている和田さんは、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「原発いらない」と声を上げて行動を始めたこと、能登原発防災研究会で原発の学習を重ねてきたことなど自身の活動を語り、さらに福島原発事故への反省がなく、株主への説明責任も果たさない北電取締役の姿勢を厳しく批判しました。最後に、豊かな自然の恵みを奪い、人権を侵害していくのが原発だと指摘し、一日も早く志賀原発の運転差止めにつながる判決を出すよう求めました。
続いて原告弁護団長の岩淵弁護士が、今回提出した第13準備書面「関電・中電との契約の終了」について、要約陳述をおこないました。志賀2号機は、建設前の1996年に関西電力・中部電力と交わされた契約によって、最大出力135.8万Kwの約半分(60万Kw)を関電・中電に供給し、受電料金に加えて保守管理のコストの一部を負担してもらう「共同開発」の形態となっていました。この契約が今年3月で終了していたにもかかわらず、そしてそのことを今年の株主総会で株主から質問されたにもかかわらず、北電経営陣は一切答えることはありませんでした。それが明らかにされたのは関電の株主総会でした。
中電・関電の年間支払額は270億円程度と推定され、北電の経営(2020年経常利益は123億円)に重大な影響を及ぼすことは容易に想像できます。北電取締役らは株主総会で決められた事項を遂行することが取締役の義務と述べていますが、株主の利益にかかわる重大な事項についてなんら説明せず議決していることが明らかとなりました。また今回の件は、当初から過剰設備と指摘されていた2号機がやはり不要だということをあらためて明らかにするものです。岩淵弁護士は、株主への説明責任を果たさず、株主総会を形骸化させている被告取締役らを厳しく批判し、関電・中電との契約の実態や、株主総会で説明しなかった理由など5項目について釈明を求めました。
これについて裁判長は、次回口頭弁論で釈明の要否も含め回答するよう被告に求めました。
原稿弁護団はこのほか、前回裁判長から求められた志賀原発の重大事故の機序(メカニズム)について、第14準備書面「重大事故発生の機序・総論」、第15準備書面「基準地震動を超える地震に襲われる危険性」、第16準備書面「敷地内断層の危険性」、第17準備書面「避難計画について審理する必要性」の各書面を提出しました。
一方、被告と補助参加人の北電からは準備書面(6)が提出され、原告が第12準備で求めた求釈明について「いずれも回答の必要性が認められない」と回答拒否の方針を明確にしました。「株主総会の議決を踏まえて業務を執行しており、なんら善管注意義務違反にはあたらない」と従来の主張を繰り返しました。
最後に次々回の期日を決め、約40分間で今回の口頭弁論は終わりました。
その後、会場を富山県弁護士会館に移し、報告集会を行ないました。
和田廣治原告団長は「原告の求釈明に応えない、株主総会でも株主に対して説明責任を果たさない北電経営陣の姿勢が鮮明になった」と厳しく批判し、参加者へ今後の裁判への一層の支援を訴えました。
意見陳述をおこなった和田美智子さんからは、日々の農作業にいそしむ暮らしの中からの思いを述べたこと、これまでのさまざまな記憶が甦(よみがえ)ってきたことなどが語られました。
岩淵弁護団長、坂本弁護団事務局長からは今回の口頭弁論の内容、とくに新たに提出した準備書面の内容について詳しく、わかりやすく解説されました。そして、次回口頭弁論では裁判所から何らかの方針が示されるだろうとの見通しが示されました。
今後の予定
第8回口頭弁論 ’21年12月13日(月)15:00~
第9回口頭弁論 '22年3月16日(水)15:00~