6月5日、志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第18回口頭弁論が富山地裁で行なわれました。快晴の空の下、裁判所近くに集まった原告や支援者、弁護団は横断幕やのぼり旗を掲げて裁判所まで行進しました。この日は午後3時から裁判が始まりました。
最初に、原告の清水哲男さんが意見陳述しました。北陸電力の社員だった父の持株を相続した清水さんは、2022年の北電株主総会で「能登半島の群発地震の影響が心配であり、志賀原発を廃炉にすべき」と質(ただ)したことにふれ、その懸念が今回の能登半島地震で現実になったのだと述べました。そして、周囲を活断層に囲まれたところで原発を動かすのは多くの県民の安全を脅かし、北電にも甚大な損害を与える危険な行為であり、志賀原発は廃炉を目指すべきだと訴えました。
続いて宮本弁護士が第38準備書面「能登半島地震で明らかになった志賀原発の危険性(2)」の要約陳述を行ないました。その中で、①原発周辺の沿岸断層などについて見落としや過小評価の可能性があること、②今回の地震動や地盤隆起が原発周辺で発生する可能性を考慮していないこと、③敷地内断層に関する調査・検討が不十分、④志賀原発の施設や機器が基準地震動を満たすように設計されていない、⑤避難の困難性など5点について指摘しました。
また、鹿島弁護士は第39準備書面「能登半島地震により志賀原発に発生したトラブルの危険性」の要約陳述を行ない、全交流電源喪失の危険性や使用済み核燃料プールの危険性、原子炉停止機能喪失の危険性について述べ、北電の危機管理能力の欠如を指摘しました。
今回、裁判官が3人とも交代したので、岩淵弁護団長が弁論更新の意見書を陳述しました。
その中で岩淵さんは今回の能登半島地震を踏まえ、①基準地震動の前提となる周囲の断層の判断に誤りがあったこと、②原子力規制委員会で地震の連動性について新規制基準適合性が確認されてもなお、重大事故が発生する危険性があること、③地震による原発事故の場合、避難計画には全く実効性がなく、住民の避難は不可能であること、などを指摘しました。
その上で、「まさに運転中でなかったことが幸いであったという危機感が被告らには皆無」だと批判し、裁判所に適正な判断を求めました。
被告側も「弁論の更新に当っての意見書」を陳述しました。
その中で、本訴訟が会社法360条に基づく株主差止訴訟であり、取締役が「法令もしくは定款に違反する行為をし」、「それによって会社に回復できない損害が生じるおそれがある」かどうかが問題であると述べ、そのいずれも全く問題がないと主張しました。
これはこれまでの主張の繰返しであり、能登半島地震の教訓が何も反映されていない内容です。新しい裁判官が眠気をこらえながら聴いていたのが印象的でした。
裁判終了後、別室で進行協議が行なわれ、傍聴者らは弁護士会館に移動して報告集会を開催しました。
次回の裁判は2024年9月30日(月)、次々回は12月18日(水)、いずれも午後3時から同地裁で開かれます。