志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第5回口頭弁論が3月22日(月)、富山地裁で行われました。今回も新型コロナ感染防止のため、傍聴席は一席ずつ間隔を空けて17席(マスコミ席を除く)に制限され、抽選の結果、原告やサポーターなど私たちの仲間14人が傍聴できました。
15時開廷。今回の原告意見陳述は林秀樹さん。林さんは志賀原発の着工前から一貫して反対運動に取り組み、90年からは株主として株主総会にも参加、原発推進の経営方針に異議を唱え、問題点を追及してきました。今日の陳述では、株主総会で北電経営陣がまともに答弁しないことや福島第一原発事故を教訓とする姿勢がないことを明らかにし、とくに2007年に発覚した臨界事故隠しで北陸電力には原発を運転する資格も能力もないことが明白になったと指摘しました。脱原発株主運動が着実に支持を広め激励の声が数多く寄せられる中、「原発から撤退させることが株主としての使命」であり、「志賀原発再稼にこだわる北電取締役の間違いを、司法の場で正していただくことを期待します」と力強く訴え、陳述を締めくくりました。
続いて原告弁護団の鹿島弁護士が「第11準備書面」を要約陳述しました。福島第一原発事故から10年が経過した状況を振り返り、今後、志賀原発を再稼働させて重大事故が発生した場合「想定外」の言葉が免罪符にならないと述べ、志賀原発の事故リスクに注目している裁判所に、「再稼働」という判断が持つ重大性をあらためて指摘しました。
原告弁護団からは、昨年12月の大阪地裁大飯原発判決に関する追加主張と求釈明を記した第10準備書面も提出されています。
被告および補助参加人である北陸電力の弁護団からは「準備書面(5)」が提出されました。これは前回原告代理人が提出した「第9準備書面-善管注意義務及び忠実義務に関する主張の補充及び求釈明の申立て-」と、「事故リスクについて関心を持っている」と表明した裁判所への、被告側の「回答」です。
ページ数は29枚、さらに証拠として分厚いファイルが2冊提出されましたが、中身はと言えば「原子力規制委員会の審査を受けるから問題なし」などと、取締役の善管注意義務を問う求釈明の趣旨を誤解・曲解するものでしかありません。
被告弁護団は「現時点で被告の考え方はすべて示し終えた」との認識を示しましたが、裁判長も事故リスクに対する取締役の善管注意義務について、「十分な回答」だったとは捉えていないようです。裁判所として争点整理をし、積極的に釈明を求めていく方針を明らかにしました。
さらに裁判長は原告弁護団の求めに応じ、志賀原発の経済性や再生可能エネルギーへの切り替えの機会喪失などの問題点についても再検討し、次回回答すると表明しました。
引き続き16時から富山県弁護士会館に会場を移し、報告集会が行なわれました。
まず、和田廣治原告団長が大阪地裁大飯判決や3月18日の水戸地裁の原告勝訴判決を引き合いに、「北電は志賀再稼働に力を入れているが、『住民の命を大切にすべき』という判決が続いている。私は司法に期待したい」と述べ、さらなる支援を求めました。
岩淵弁護団長は、水戸地裁判決は全国の弁護団にも大きな影響を与えるとの認識を示しました。そして、フクシマ事故後毎年ほぼ1件は勝訴判決を勝ち取っているが、その支えは国民世論であると指摘し、運動のより一層の拡大を呼びかけました。
坂本弁護団事務局長は法廷内の専門的なやり通りについてわかりやすく解説し、裁判所の積極的な釈明や論点整理への動き、さらに事故リスク以外の論点についての再検討の意向について前向きに評価する認識が示されました。
会場の参加者からは傍聴者の拡大など運動強化への課題を問う質問もあり、金沢訴訟の北野原告団長からは「老朽原発を動かすな!高浜全国集会」の報告、核物質防護問題についての石川県庁への申入れ、そして原子力規制委員会の審査状況などの報告がありました。