志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団ホームページ

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2021年3月23日
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北電の回答は不十分!裁判長が釈明権行使に言及

志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第5回口頭弁論が3月22日(月)、富山地裁で行われました。今回も新型コロナ感染防止のため、傍聴席は一席ずつ間隔を空けて17席(マスコミ席を除く)に制限され、抽選の結果、原告やサポーターなど私たちの仲間14人が傍聴できました。

15時開廷。今回の原告意見陳述は林秀樹さん。林さんは志賀原発の着工前から一貫して反対運動に取り組み、90年からは株主として株主総会にも参加、原発推進の経営方針に異議を唱え、問題点を追及してきました。今日の陳述では、株主総会で北電経営陣がまともに答弁しないことや福島第一原発事故を教訓とする姿勢がないことを明らかにし、とくに2007年に発覚した臨界事故隠しで北陸電力には原発を運転する資格も能力もないことが明白になったと指摘しました。脱原発株主運動が着実に支持を広め激励の声が数多く寄せられる中、「原発から撤退させることが株主としての使命」であり、「志賀原発再稼にこだわる北電取締役の間違いを、司法の場で正していただくことを期待します」と力強く訴え、陳述を締めくくりました。

続いて原告弁護団の鹿島弁護士が「第11準備書面」を要約陳述しました。福島第一原発事故から10年が経過した状況を振り返り、今後、志賀原発を再稼働させて重大事故が発生した場合「想定外」の言葉が免罪符にならないと述べ、志賀原発の事故リスクに注目している裁判所に、「再稼働」という判断が持つ重大性をあらためて指摘しました。
原告弁護団からは、昨年12月の大阪地裁大飯原発判決に関する追加主張と求釈明を記した第10準備書面も提出されています。

被告および補助参加人である北陸電力の弁護団からは「準備書面(5)」が提出されました。これは前回原告代理人が提出した「第9準備書面-善管注意義務及び忠実義務に関する主張の補充及び求釈明の申立て-」と、「事故リスクについて関心を持っている」と表明した裁判所への、被告側の「回答」です。
ページ数は29枚、さらに証拠として分厚いファイルが2冊提出されましたが、中身はと言えば「原子力規制委員会の審査を受けるから問題なし」などと、取締役の善管注意義務を問う求釈明の趣旨を誤解・曲解するものでしかありません。
被告弁護団は「現時点で被告の考え方はすべて示し終えた」との認識を示しましたが、裁判長も事故リスクに対する取締役の善管注意義務について、「十分な回答」だったとは捉えていないようです。裁判所として争点整理をし、積極的に釈明を求めていく方針を明らかにしました。
さらに裁判長は原告弁護団の求めに応じ、志賀原発の経済性や再生可能エネルギーへの切り替えの機会喪失などの問題点についても再検討し、次回回答すると表明しました。

引き続き16時から富山県弁護士会館に会場を移し、報告集会が行なわれました。
まず、和田廣治原告団長が大阪地裁大飯判決や3月18日の水戸地裁の原告勝訴判決を引き合いに、「北電は志賀再稼働に力を入れているが、『住民の命を大切にすべき』という判決が続いている。私は司法に期待したい」と述べ、さらなる支援を求めました。
岩淵弁護団長は、水戸地裁判決は全国の弁護団にも大きな影響を与えるとの認識を示しました。そして、フクシマ事故後毎年ほぼ1件は勝訴判決を勝ち取っているが、その支えは国民世論であると指摘し、運動のより一層の拡大を呼びかけました。
坂本弁護団事務局長は法廷内の専門的なやり通りについてわかりやすく解説し、裁判所の積極的な釈明や論点整理への動き、さらに事故リスク以外の論点についての再検討の意向について前向きに評価する認識が示されました。
会場の参加者からは傍聴者の拡大など運動強化への課題を問う質問もあり、金沢訴訟の北野原告団長からは「老朽原発を動かすな!高浜全国集会」の報告、核物質防護問題についての石川県庁への申入れ、そして原子力規制委員会の審査状況などの報告がありました。

今後の予定
第6回口頭弁論 7月14日(水)15:00~
第7回口頭弁論 9月29日(水)15:00~

2021年2月5日
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金沢訴訟口頭弁論の報告

2月4日、第32回口頭弁論が金沢地方裁判所205号法廷で行われました。
寒風が吹きつけときに雪が舞う中、原告・サポーターは石川門下の白鳥路入口に集合、横断幕やアピール板を掲げて裁判所まで行進しました。
新型コロナウイルス感染対策として、一人置きに減らされた傍聴席は36席。今回は抽選でなく先着順となり、法廷前の廊下に長い行列ができました。

今回原告意見陳述を行ったのは全国一般労組で専従役員をしている尾崎彰信さん。
尾崎さんは3.11福島原発事故を目の当たりにして、こんな悲劇を二度と引き起こしてはならないという思いで原告団に加わった経緯から語りはじめました。
そして、原発は何のためにあったのか―安全神話をふりまき、危険な原発を過疎地に押しつけ、地元住民の犠牲を原発マネーで買収し、核のゴミや核兵器に転用できるプルトニウムをため込み、幾万の原発被災者を生み、広大な国土を人の住めない土地にしてしまった。人々の命と平和な暮らしと幸福を犠牲にしてまで、誰の何の利益のために原発を動かすのか、あらためて問い直すべきではないか、と提起しました。
尾崎さんは最後に、将来世代への負の遺産を増やさないために、一刻も早く「原発ゼロ」へ踏み出す決断が必要だと訴えました。

その後裁判の進行をめぐる協議がありました。
今回被告北陸電力は「上申書」を提出し、1月15日に開催された規制委員会の適合性審査会合(TV会議)について報告しました。その中で北電は陸域6本海岸部4本の評価対象断層について、上載地層法および鉱物脈法による調査で12~13万年以降活動していないことを確認したと説明、規制委も「データがおおむね揃っている」などと評価し、「今春以降に…(中略)…現地調査を実施した上で、活動性についての最終判断を行うとの具体的方針を示した」としています。
※この「今春以降…」の部分は審査会合で言及があったのではなく、マスコミ報道を引用したにすぎないということがその後の原告弁護団の追及で明らかになりました。
原告側は前回同様、すでに審議は尽くされているとして早期結審を主張し、またいつまでも漫然と規制委の判断待つのではなく、時期を区切るなど適切な訴訟指揮を行うよう求めました。
しかし裁判長は「現時点でこれまでの審理方針は変更しない」と述べて、次回弁論期日を設定しました。原告側の「その期日までにどんな準備をすることを求めているのか」という問いに対しては、「とくに予定するものはない」ということでした。一体何のために次回期日を決めたのでしょうか?

口頭弁論終了後、北陸会館5階ホールで報告集会が開催され、原告・サポーター、弁護団、マスコミ関係者など40余人が参加しました。
次回口頭弁論は5月31日(月)、午後2時から開かれます。

2020年12月10日
by ok
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裁判長が「事故リスクに関心あり」と明言

志賀原発株主差止訴訟(富山訴訟)の第4回口頭弁論が12月9日、富山地裁で行われました。
今回も新型コロナ感染防止のため傍聴席はマスコミを除いて17席(前回は12席)に制限されていたため、サポーターのみなさんへの呼びかけは控えてきましたが、富山、石川、さらには京都からの参加者も含め約30人が傍聴抽選に並びました。

14時開廷。まず6月の北陸電力株主総会で代表取締役副社長に就任した水谷和久氏を被告として追加、本件訴訟に併合して審理することを確認しました。
今回の原告意見陳述は羽咋市の滝口保さん。滝口さんは2001年から「命のネットワーク」のメンバーとして自主防災などの活動に取り組んでおり、陳述では福島第一原発事故を契機に開始した風船飛ばし調査を紹介、事故が起こったら放射能が1日で広範囲に拡散する危険性を指摘しました。滝口さんは北陸電力の株主として株主運動にも参加しており、今年の株主総会での質疑の様子も紹介しました。志賀原発の廃炉について質した滝口さんに対して、石黒副社長は「廃炉は考えていない」と述べ、費用や期間、放射性廃棄物の処理方法などに一切答えなかったのです。株主に対してコストに関わる重要な情報を提供することなく、再稼働の承認を得たとする株主総会の実態を厳しく批判しました。

続いて、今回の口頭弁論に向けて原告弁護団が提出した「第9準備書面-善管注意義務及び忠実義務に関する主張の補充及び求釈明の申立て―」について、原告、被告、裁判所の間で意見が交わされました(第9準備書面提出の背景については第3回口頭弁論の報告参照)。
この準備書面は、福島第一原発事故を経て、原発を保有し運転しようとする電力会社の経営者に求められる「善管注意義務及び忠実義務」には、事故リスク、コスト、社会的責任の3つの分野にわたる12の義務があることを明らかにし、その義務を果たしているかどうかを確認するための具体的な47項目を挙げ、被告の釈明を求めたものです。(※法律用語の「釈明」は解明、説明のような意味で、道徳的な意味合いは含まれていません)
原告の「求釈明」に対して、被告弁護人は「要否も含め、次回答える」と対応を明言しませんでした。
これに対して裁判長はどう出るか。さらりと「では次回まで待ちましょう」と述べて弁論を閉めてしまうのでは、と不安を覚えた傍聴者もいたかもしれません。しかし、裁判長は「裁判所としては事故リスクについて関心を持っている」と述べ、準備書面の中で掲げた12の注意義務の中の4つについて「審理の必要性は高い」と表明したのです。これらに関わる求釈明は22項目にのぼります。一方、コストや社会的責任に関する項目については「全部逐一答える必要はないのではないか」との認識も示しました。
この裁判長の方針を受け、原告弁護団の坂本事務局長は「裁判所の考えは理解した。原告としては全項目について釈明を求める考えに変わりはないが、事故のリスクについての回答を踏まえながら、コストなど他の項目についても釈明の必要性をさらに明らかにしていく」と述べました。
さらに原告弁護人からは、第9準備書面に関わる証拠と、さる12月5日の大飯3、4号機設置変更許可の取消しを認めた大阪地裁判決に関連して求釈明を追加で提出する方針も示されました。
これらのやり取りを受け、被告弁護人は「裁判長の問題意識も踏まえ、(次の口頭弁論前の)3月10日までに準備書面を提出する」と言わざるを得ませんでした。
このようなやり取りの後、最後に次々回期日を7月14日と決め、14時30分に閉廷しました。

口頭弁論終了後、自治労とやま会館で報告集会が開かれました。
冒頭、和田廣治原告団長から「コロナで進行が遅れた1年だったが、多くのみなさんの支援で裁判が前進している」と感謝の言葉が述べられました。
岩淵弁護団長からは、先般の大阪地裁の原告勝訴判決について、①3.11前の原発訴訟の勝訴判決が2件だったのに対して3.11後は6件となり、原発訴訟は着実に前進している、②規制のあり方が問われている、③志賀を含めすべての原発に関係する、と大きな意義があったことを指摘しました。また本日の口頭弁論について、「第9準備書面で訴訟は前進する。裁判長が事故リスクに関心ありと明言したことは大きい」と述べました。
続いて坂本弁護団事務局長が第9準備書面の内容についてわかりやすく解説し、裁判長が事故リスクについて審理の必要性を認めたことで、北電は「注意義務なし」との主張ができなくなったとの認識を示しました。また、事故リスクの議論を深めることは結果的に原発のコストの問題にもつながっていくとの見通しも示しました。
報告集会は、次回以降の裁判への期待を互いに確認しつつ、清水哲男原告団事務局長の音頭による参加者一同のガンバロウ三唱で締めくくられました。

今年の富山訴訟は、新型コロナの影響で3月と5月に予定されていた口頭弁論が延期となる異例の展開となりましたが、弁護団が精力を傾注した第9準備書面によって訴訟はいよいよ大きく動き始めました。全国が注目する株主による原発の差止訴訟は、来年さらに大きな関心を集め、志賀原発廃炉への期待も集めるものと思われます。みなさまのさらなるご支援をお願いします。

今後の予定
第5回口頭弁論 2021年3月22日(月)15:00~
第6回口頭弁論 2021年7月14日(水)15:00~
※傍聴抽選の時間などは追ってご連絡します。