6月8日午後2時より名古屋高裁金沢支部において、大飯原発差止訴訟控訴審の第8回口頭弁論が行われました。
法廷で裁判官(内藤正之裁判長)が「キレる」のを、私は初めて見ました。冒頭、更新手続(※)をめぐる議論です。原告側が主張したのは至極当たり前のことです。今回から裁判官が交代(3人のうち一人)したのですが、次回期日に弁論更新のための時間をきちんと取ってほしい、というもの。裁判長はこの日の弁論更新を指示し、「おれの訴訟指揮に従えないのか」と言わんばかりの発言は、完全に声が裏返っていました。
最終的に、次回弁論更新に2時間を確保することになったのですが、だったらあの高圧的な態度は一体何だったのか。
※注)民事訴訟法第249条②「裁判官が代わった場合には、当事者は従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならない」
原告側の意見陳述は障害者の相談支援専門員をしている小松崎さん。彼女は東日本大震災の際、福井から南相馬市に派遣され障害者訪問活動を行った経験を話しました。障害のある人は環境変化に敏感です。小さな変化でも、不安定になったり体調を崩したりする人が多く、日常生活を失うことは健康、命に直結する問題です。
小松崎さんは、「いざ原発事故が起ったら、取り残されるのは障害者、高齢者です。逃げられない人がいるとわかっていながら、また原発を動かすのでしょうか」と訴えました。
原告弁護団からは第20~25準備書面が提出されました。私が注目した(弁護団もとくにその意義を強調した)のは、島崎邦彦さんの陳述書です。島崎さんは名だたる活断層の専門家であり、原子力規制委員会の元委員長代理でもあります。
氏はこれまで地震学会のフィールドで、「入倉・三宅モデルを使うと基準地震動は過小評価(1/4程度に)される」ことを何度も指摘してきましたが、関西電力はこれを無視してきました。今回氏は原告弁護団の要請に応じ、大飯原発の基準地震動の策定は過小評価に過ぎる、と陳述書で具体的に明らかにしました。
このことの意義は決して小さいものではありません。大飯原発について関西電力が定めた基準地震動が過小であり、そのことを規制委OBが強く懸念していることを示したのみならず、各電力会社が自らに都合の良い方式を採用して基準地震動を定めている以上、その影響は全国の原発訴訟に及ぶものです。
最後に陳述した山本雅彦さんは、関西電力が規制委員会に対してさえ、大飯原発周辺を調査した生データを提出していないことを明らかにしました。規制委員会は関電が提出した計算結果、あるいはその計算に基づいた図しか見ていない。これでは計算に誤りがないかどうか、検証することすらできません。
原告団は裁判所に対して、こうした生データの提出命令を出すように求めました。
原告および被告の準備書面、意見陳述書などは「福井から原発を止める裁判の会」ホームページ http://adieunpp.com/judge/kousai.html をご覧ください。
第9回口頭弁論は10月19日、
第10回口頭弁論は2017年1月30日、いずれも午後2時から同高裁で行われる予定です。
左は朝日新聞(6/9)、右は北陸中日新聞(同)
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