志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第6回口頭弁論が7月14日、富山地裁で行われました。
今回も新型コロナ感染防止のため、傍聴席は一席ずつ間隔を空けて17席(マスコミ席を除く)に制限されました。
15時開廷。3月末で転出した和久田道雄裁判長に代わり、新たに着任した松井洋裁判長による初めての口頭弁論です。
最初に、原告清水哲男さんによる意見陳述がおこなわれました。富山県職員OBの清水さんは北陸電力社員だったお父さんが保有していた従業員持株を相続して株主となり、2013年から株主総会に出席してきました。総会では従業員の労働条件や労働災害、原発作業員の労働環境などを重点的に取り上げ、利益優先でコンプライアンス意識が欠如している北電の企業体質を明らかにしてきました。さらに富山県が同社の大株主であることを指摘し、富山県民の多額の税金が投入されている北電は「公共の福祉を重視した事業運営」を図るべきであり原発事業はそれに逆行している、と厳しく批判しました。
続いて裁判官が交代したことによる弁論の更新手続きに入りました。
まず原告の岩淵弁護団長が、福島第一原発事故から10年が経過しあらためて事故の惨状が明らかになっており、安全、安い、必要という3つの原発神話が崩壊したことを指摘しました。その上で、本訴訟は安全性だけでなく、コストや必要性も争点とする訴訟であることに留意するよう求めました。中田・小島弁護士からは、第9準備書面(2020年12月提出)で原告が求めた志賀原発のコストや志賀再稼働の経済合理性などについて被告がまったく回答していないと指摘し、裁判所の訴訟指揮を求めました。
これに対して被告・補助参加人(北電)代理人からは、「弁論更新にあたっての意見書」が陳述され、原告の訴えは会社法360条に基づく株主差止訴訟の要件を満たしていないとして、あらためて請求を棄却するよう求めました。さらに「本件訴訟は原告が自らの主義主張を取締役に押しつけるものだ」などと付け加えましたが、これに対しては原告弁護団が直ちに反論を展開しました。
続いて坂本弁護士がパワーポイントを使って新たに提出した第12準備書面について要約陳述をおこないました。被告らは、原告の第9準備書面による求釈明に対して、原発の危険性に関する箇所についてのみ裁判所からの求めに応じて回答(準備書面〈5〉)しました。しかし、その内容は原告の求釈明の趣旨を曲解し、あるいは回答をはぐらかすなど、正面から応えるものではありませんでした。本準備書面は被告らの不誠実な回答を具体的に指摘し、改めて回答を求めたものです。
被告らはすでに反論は尽くしているとして回答を拒否しましたが、新裁判長は善管注意義務の判断時期について被告に反論があれば検討するよう求めました。
一方、原告側に対しては、志賀原発の重大事故発生について、原告が考える機序(発生のメカニズム)および具体的事実を基にした主張をしてほしいと求めました。
閉廷後、原告・サポーターらは富山県弁護士会館に会場を移し、報告集会を行ないました。
冒頭のあいさつで、和田廣治原告団長は北電が富来川南岸断層を活断層と認めた5月24日の原子力規制委員会の審査会合に言及し、志賀原発は敷地内断層の問題が決着していないことに加え、三方を活断層で囲まれた危険な原発だということが明らかになったと指摘し、訴訟への一層の支援を求めました。
岩淵弁護団長は、北電の経営に重大な影響を及ぼす事故のリスクについて新裁判長も関心を寄せており、もう少し掘り下げるという視点で議論し始めたことを評価したいと述べました。また坂本弁護士は本日の弁論内容を解説する中で、規制委の適合性審査を経るから安全だとする北電の立場に裁判所は立っていない、と指摘しました。
会場からは、被告が北電の「社会的責任」に関して、求釈明に応じる必要は認められないと述べたことに対する抗議の声や、第12準備書面で求めた求釈明に対する裁判長の対応を問う質問などがありました。
最後に、川原登喜の原告副団長が先般の株主総会での石黒副社長の発言「志賀原発を世界最高峰の水準の安全にする」に触れ、「最高水準の安全は志賀原発の廃炉でこそ実現される」と訴えて報告集会を締めくくりました。
今後の予定は以下のとおりです。
第7回口頭弁論 9月29日(水)15:00~
第8回口頭弁論 12月13日(月)15:00~