志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団ホームページ

〒920-0024 金沢市西念3-3-5 フレンドパーク石川5F TEL (076)261-4657

志賀町からの回答についての見解

| 0 comments

「原子力防災計画・避難計画に関する質問書」に対する志賀町からの回答

1.本年4月末に提出した質問書に対して、11月7日、上記のとおり、文書で回答があった。志賀原発は停止中とはいえ、いま現在も使用済み核燃料を含めた核燃料が、直下の断層の活動性が指摘される原子炉建屋の中に保管されている。原子力防災は再稼働を巡る大きな争点であると同時に、まさに現時点での課題でもある。質問が多岐にわたるとはいえ、回答までに約6カ月もの時間を要したこと、それ自体が原子力防災の運用に大きな不安を与えるものであると、まず指摘しなければならない。

2.質問書は、志賀原発の原子力災害に対して、防災計画の目的に掲げる「住民等の生命、身体及び財産を保護」が果たして実現できるのか、現時点での到達点、未達成の課題について確認するものである。志賀町の原子力防災の大きな特徴は、国の指針や県の計画に単純に追従することなく、独自に「PAZ、UPZの一斉避難」、「全町白山市避難」、「風向きによる避難」を追求している点にある。これ自体は町民の安全・安心を守ろうとする小泉町長の苦心の表れであり、国の指針や県の計画に対する大きな問題提起でもあると私たちは受け止めている。

3.ただし、現行原子力防災体制は、国や県はじめ数多くの防災関係機関との協働、連携のもとで成り立つ仕組みとなっている。志賀町独自の方針は、実際の原子力災害に直面したとき、果たして機能するのか、残念ながら数々の疑問点も指摘せざるを得ない。また、毎年実施される防災訓練に反映されたこともなく、関係機関や地域住民への周知も明らかに不十分である。

4.以上を踏まえ、回答の問題点、注目点を以下指摘する。
(1)「PAZ、UPZの一斉避難」について【質問3(1)】
全面緊急事態でPAZは一斉避難、UPZはまずは屋内退避という段階的避難は、実際に災害に直面したとき成り立つのか、私たちも大いに疑問を抱いている。町民の線引きを避けたい町長の思いは十分に理解する。しかし、果たして一斉避難で大渋滞など混乱は起きないのか、移動手段は迅速に確保できるのか、疑問は解消していない。なにより、志賀町民の一斉避難を周辺自治体住民は屋内退避で見守るというシナリオは、周辺自治体の理解を得られるのだろうか。「今後、協議する」とのことだが、国の指針や県の計画の根幹に抵触する重要課題が、いまだ協議されていないことにも驚きを覚える。

(2)「全町白山市避難」について【同じく質問3(1)】
背景には半島先端方向への避難による孤立化の不安がある。できれば避けたい、特に風向きが半島先端方向への場合はなおさらである。しかし、白山市への避難となると富来地域住民は原発に近づくこととなり、果たして安全な避難行動は実現するのか。回答は「発電所の状況を継続的に把握し、状況に応じて判断する」(3(1)ア)とのこと。仮に実現可能なケースがあるとしても、その判断は町独自でできるのか。また、渋滞問題も含め、全町一斉、同一方向への避難には多くの課題が付随する。町民の安全の確保、不安の解消への思いは理解するが、現状は具体策の無い理想論ではないか。

(3)風向きによる避難について【質問3(2)】
県が想定する「気象条件」により受け入れ困難な場合とは、大雪等で交通が遮断された場合などであり、風向きによる避難先の選択は含まれていない。一方、志賀町は問2(2)の回答にあるように、避難方向を判断するにあたって風向きも考慮するとしている。風向きを考慮した避難は基本的には正しく、住民の安全を守るため、あらゆる可能性を追求したいという思いは共有したい。ただし、地勢的に避難方向の選択肢がほとんどない原発以北の能登地域で、どこまで風向きを考慮すること可能だろうか。そういう場所になぜ立地したのかという根本問題に向き合わざるを得ないのではないか。

(4)問4.5.6.7.8.9.10.11について
防災計画・避難計画に記載された項目を、生活の実態、地域の実情に即して具体的に掘り下げると、多くの検討課題が残さていることが明らかになった。
例えば小中学生の引き渡しも職場の事情、家庭の事情でどこまでスムーズにいくかわからない。高校生になるとさらに事情は複雑となる。要支援者の避難体制の確立は、避難行動時に死亡者を出した福島の大きな教訓だが、体制が整っているとは到底言えない。想定する長期避難の期間については回答がなかったが、原子力災害の現実を直視するうえでも、住民への周知は不可欠である。

5.問1(1)では「より高い実効性の確保に向けて検証を続けてまいりたい」との回答だが、現状は、防災計画の目的に掲げた「住民等の生命、身体及び財産を保護」の実現には程遠く、再稼働の議論が先走りするようなことは決して許されない。
 問12で提起した武力攻撃というリスクも避けては通れない。今回は、この回答について深掘りし議論する機会を設けることはできなかったが、今後も質問書提出の取り組みは継続し、原子力防災を巡る諸課題について、自治体関係者はもちろんのこと、多くの皆さんと議論を深めていきたい。

▼この記事のFaceBookやTwitterへのシェアされる方は下記のボタンをクリックしてください。
Share on facebook
Facebook
0
Share on twitter
Twitter

コメントを残す

Required fields are marked *.