志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)の第9回口頭弁論が3月16日、富山地裁で開かれました。今回も新型コロナ感染防止対策のため、一般の傍聴は16席に制限される中での口頭弁論です。
15時開廷。今回、原告側は第20、第21と2本の準備書面を提出しています。まず「第20準備書面―再度の求釈明の申立て―」について、片口弁護士が要約陳述をおこないました。
原告らはこの間、志賀原発は未曽有の被害を及ぼすリスクがあること、事故がなくても運転自体に膨大な費用がかかること、再エネコストは年々減少傾向にあることなどを明らかにし
続いて「第21準備書面-新規制基準の不合理性-」について鹿島弁護士が要約陳述をおこないました。被告らは志賀原発の再稼働について、「原子力規制委員会の新規制基準適合審査を経て再稼働するので法令等の遵守は明らか」、「回復できない損害が生じる違反行為はない」と主張しています。第21準備書面はこの主張の前提を覆すべく、「そもそも新規制基準が立地審査指針を排除しシビアアクシデント対策にも不備がある」ことなどを指摘し、「それ自体が不合理で安全性を担保するものでない」ということを明らかにしています。
これに対して被告らは準備書面(7)を提出し、原告らの主張が、会社法360条が求める要件事実「法令若しくは定款違反で会社に回復しがたい損害が生じるおそれがある」とは関連がないとし、あらためて求釈明を拒否し、加えて、取締役は原発の安全性の専門家ではなく、原子力規制委員会が世界で最も厳しいとされる新規制基準の適合審査を経て安全を確認し再稼働するという手順を踏むことが、まさに取締役に求められる善管注意義務だと主張しました。
原告らの主張が会社法360条と関連がないとする被告らの主張に対して、原告代理人の水谷弁護士は「原告らの主張を否認するのならば明確な根拠を示せ」、「裁判所は民訴法149条に基づき釈明権を行使してほしい」と迫りました。ここで裁判長は合議すると述べ、休憩となりました。
5分後再開され、ここで鹿島弁護士が挙手、「『世界で最も厳しい基準』とは誰が言っているのか、また金井・石黒両取締役は志賀原発所長を務めていたことはあるか」と被告側に問いました。「世界で最も厳しい基準」は基準を作成した原子力規制委員会委員長は否定していますが、被告は「閣議決定されたエネルギー基本計画の中で記されている」と述べ、また「原発の安全に関する専門知識は法律上、取締役に求められていない」として、金井・石黒両被告の経歴については言及しませんでした。金井・石黒両被告は北陸電力内で長年原子力畑を歩んできた原子力分野の専門家であり、原子力事業の責任者です。志賀原発の安全を規制委員会に丸投げするような言い訳は許されません。
こうした質疑を経た後、裁判所は第21準備書面については、被告に対して考えを示すよう求め、その他の原告が求める求釈明については次回期日(6月15日)までに裁判所の方針を明らかにすると述べ、閉廷となりました。
その後、原告や弁護団、支援者らは弁護士会館に移動して報告集会を開催。和田原告団長、岩淵弁護団長のあいさつに続き、坂本弁護団事務局長が参加者に弁論の内容を解説しました。
また坂本事務局長は、この日の弁論にあたり、原発のコスト問題に詳しい大島堅一龍谷大教授の意見書を提出したことも報告しました。
フクシマから11年、甲状腺がん訴訟の提訴や、福島刑事裁判や東電株主訴訟の動き、ウクライナでの原発への武力攻撃、石川県知事選の結果など情勢についても報告があり、最後に清水原告団事務局長の「奥能登では地震が続いている。なんとしても志賀原発を止めなければならない」という発言で集会を締めくくりました。