7月5日午後2時より名古屋高裁金沢支部において、大飯原発差止訴訟控訴審の第12回口頭弁論が行われました。
裁判ではまず最初に、大飯高浜原発などで働いていた原発技術者の山本雅彦さんが意見陳述しました。山本さんは前回証言した元原子力規制庁委員長代理の島崎邦彦氏のインタビュー記事(朝日新聞)の中から、「…電力会社は想定が小さければ耐震費用を抑えられる。地震の想定をわずかでも小さく見積もろうとするのは、コストカットと同じ意識かも知れません。安全文化に対する会社の体質の問題でしょう…あの津波で学んだはずでしたが、いまだ変わっていない人もいます」の部分を引用しました。
山本さんは「ひずみ集中帯」の調査は新潟地域や津軽沖以外の地域はほとんど観測データが得られていないことを指摘し、「福井地域も調査する」としている国の調査を待つべきだと主張しました。
続いて甫守弁護士が、大飯原発の地震動は過小評価になっているとした前回の島崎証言をふまえて、具体的にどういう地震動を起こすかということについて、東大地震研究所の纐纈一起教授が言及しているから、ぜひとも証人尋問で訊きたい、と主張しました。
最後に島田弁護団長が、国の安全審査に問題があるということを丁寧に指摘し、纐纈教授、新潟大学立石教授などの証人尋問を求めました。
これに対して被告関西電力は、必要な立証は尽くしているとして、新たな証人は必要ないと主張しました。
内藤裁判所長は合議のため、10分間の休廷を言い渡しました。
そして再開直後、裁判長は審理が3年近くに及ぶこと、膨大な証拠や書証があり、裁判所が判断するに十分な資料があるとして、原告側が求めた証人をことごとく却下しました。
直ちに原告弁護団の河合弁護士が立ち上がり、「真実を究明する意思があるかどうか、深い疑念を抱かざるを得ない」として、3人の裁判官を忌避しました。
「忌避」というのは、裁判官が不公平な裁判を行うおそれがある場合、訴訟当事者の申し立てによってそれら裁判官をその事件の職務執行から排除するものです。「あなたはちゃんとした判決を書く気がないからどけ」と言ったも同様で、弁護士の9割以上は経験したことのない場面です。
今後は裁判が一時中断され、名古屋高裁の別の裁判体が合議して忌避が妥当であるかどうかを判断します。この訴訟はまた、大きな区切りを迎えることになりました。